尿検査の検査結果の疑問・・・A/C比とP/C比とその測定値の欄のdiluteは何を意味するのか
近年,世相を反映して,塩分の多い食事のほか,ストレスや暴飲・暴食などに起因する糖尿病の合併症として,
腎臓病患者が増えてきているようで,早期発見にP/C比とA/C比という項目が重要になっています。
病院で,検査結果が印刷された紙を渡されても,専門的すぎて教えてもらえないことが書いてある
という場合があります。
その中で,P/C比とA/C比の測定値の欄に,見慣れないdilute(ディリュート)という英語が書かれていました。
今回は,P/C比とA/C比とはそもそも何を意味するのか,そして dilute の意味について解説してみたい
と思います。
P/C比,A/C比とは
P/C比は,タンパク質(protein)/クレアチニン(creatinine)比,
A/C比は,アルブミン(albumin)/クレアチニン(creatinine)比,
のことで,
タンパク質とアルブミンの数値データを,それぞれクレアチニンの数値で割っているということは,
生データのままでは比較できない数値を,一般的な比較に使用できる数値にしているということでしょう。
クレアチニンは,筋肉を収縮させて動かすためのエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)を生成する
クレアチンリン酸が分解してできた筋肉起源の老廃物のため,クレアチニン量は,人それぞれの筋肉量と
相関があって,そのままでは数値を評価できません。
しかし,筋肉量や運動量に個人差があっても,腎臓の糸球体で濾過された後,クレアチニンは老廃物として
ほとんど再吸収されず変動しにくいため,尿中のタンパクやアルブミンの量を比較できるようにするための数値
として用いられています。
腎臓の機能が低下してくると,血液中の老廃物であるクレアチニンを処理しきれずにその量は増加し,
その結果として,尿として排出されるクレアチニンは少なくなります。
P/C比のPを意味するプロテインは,タンパク(蛋白)質のことですが,
P/C比を得ることで,1日当たりの尿中のタンパク排泄量を推定でき,
尿タンパクで,陰性(-)あるいは陽性(+,±:要注意;2+以上:異常)かの判定を意義あるものにします。
アルブミンもタンパク質の1種ですが,血液中の水分量を保持・調整したり,栄養素を目的地に運ぶ重要な
働きがあります。
尿中アルブミンは糖尿病と関係があって,糖尿病性腎症があると尿中にアルブミンが漏れ出し,
症状の程度(ステージ1~5;4は腎不全,5は透析療法)によって増加していきますので,
A/C比を得ることで,ステージ分類の指標として使用することができます。
尿蛋白で陽性となるタンパク尿がいけないというのは,そのためです。
では,以下に,P/C比と,A/C比の項目の測定値欄に表示される dilute の意味について説明したいと思います。
尿検査結果において測定値欄のdiluteの意味とは
A/C比とP/C比は,正常の数値であれば,normalと記載されるため,安心しますが,
dilute(ディリュート)と書いてあると,医者から問題ないと言われてもかなり気になるものです。
「dilute」は,英語の辞書で引くと,形容詞で「(水などで)薄めた」という意味です。
上の検査結果の例では,尿クレアチニンが,10mg/dLで,蛋白(タンパク)の項目が(-),すなわち
陰性になっています。
この場合,尿が薄すぎるために正確な測定値を出せず評価できないことから,diluteと記されます。
したがって,新たに採尿した濃い尿で再検査すると,微量のアルブミンが検出されることも否定はできない
ですので,気になる場合は再検ということになるでしょう。
上でも説明したように,尿タンパクは,陰性ですので性急な問題ではないと思われますが,
きちんとP/C比と,A/C比の数値がnormal(正常値)の状態であったほうが,より安心だと考えられます。
P/C比,A/C比がnormalであっても微量のアルブミンが検出されることもあります。
このような測定値を気にする必要がないよう日頃から気をつけたいものです。
2020/8/27
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