アジサイ(紫陽花)の種類と,その花の色のからくり

今年もアジサイの季節がやってきました。

アジサイには色々な種類があって,どれなのかまぎらわしい種類もあります。

また,色が途中で変化するものや色の変わらないもの,最初から色のないものなど,

さまざまなアジサイがあります。

今回,アジサイの例を挙げながら,花の色事情について考えられることを綴ってみました。

 

ガクアジサイ Hydrangea macrophylla f. normalis

 

 

 

 

 

アジサイの花のつくり

 

アジサイの花びらは,中心の小さい部分にあるということを聞いたことがある!

という方もいらっしゃると思います。

 

そのとおりで,アジサイの花は,萼が発達した花においては,中心部の小さい部分が花びら(花弁)で,

周りの大きな花びらに見える部分が萼片になり,装飾花と呼ばれています。

 

アジサイの花は,枯れてもいつまでも落ちません。

装飾花は,枯れても落ちずについているので,宿存萼(しゅくそんがく)ともいいます。

 

アジサイ
ガクアジサイの内花被(青色)と外花被(白色)

 

 

アルミニウムイオンの花色への影響

 

アルミニウムイオンは,アジサイの花を青くするとされています 。

それはどういうことなのか考えてみました。

 

まず,3価のアルミニウムイオン(Al3+)の溶解度積(2.0×10-32)から計算して図を書いてみました。

 

 

この図は,pHが低いほど,アルミニウムイオン濃度が高いということを示しています。

 

アジサイに含まれるアルミニウムイオン濃度も考えないといけません。

アジサイの花 1g中に,アルミニウムが40µg以上含まれると花が青色になると言われていますので,

アジサイの花の比重が水に近似するとみなすと,アルミニウムが40ppm以上の濃度で青色を発色する

ということになります。

この近似値を用いると,理論上は,pHが,おおよそ4.5以下でアルミニウムがイオン化すると考えられます。

ですので,pHが4.5以下になると,アルミニウムイオンはアントシアニンという色素と結びついて

キレート錯体を生じ青色を発色するという計算になります。

 

アントシアニンは, ポリフェノール の1種で,被子植物には普通に含まれているのですが,

とくにブルーベリーマルベリー(クワ),イチゴなどのベリー類,

ブドウ,ナスなどの実の皮など,植物にとって大切な部分に多く含まれているようです。

ヒトにとっても,アントシアニンは,紫外線にとくに弱い目などを守る有効成分になります。

 

 

花の色の土壌のpH(土壌酸度)との関係

 

青系のアジサイは, 土壌pH4~4.5で適正pHですが,

赤系のアジサイはpH6.5~7とされています。

 

pHは,7.0で中性ですが,

アントシアニンは,アルカリ条件下で構造が変化して青色になります。

また,pH8を超えると,多くの植物は生育できなくなります。

 

酸性で青色,アルカリ性で赤色といういい方は語弊がありますので,

酸性の中でも土壌酸度の高い方(酸性側),低い方(中性側),

もしくは,pHの数値で表現するのが適当だと思います。

 

 

アルミニウムは両性金属 

 

アルミニウムは,両性金属 なのでpH4.5以下の条件だけでなく,pH6.5以上でもイオンとして存在し得ます。

アルミニウムは土壌粒子である鉱物中において,ケイ酸アルミニウムの形で存在するため,

pH6.5以上の条件では,溶出しにくいと考えられます。

 

ですので,花の色を決めるのは,ある程度のアルミニウムイオンが,

根から吸収されるか否かの問題なのだと思います。

 

 

アジサイの色の原因

 

セイヨウアジサイ

 

セイヨウアジサイ
セイヨウアジサイ(Hydrangea macrophylla ‘Mirai’)

 

・上の写真のようなアジサイは,ガクアジサイ(額紫陽花)の花序がすべて装飾花に変化し,

手毬のような形になっているので,手まり咲きといいます。

手まり咲きの中でも,ヨーロッパで品種改良された花が,セイヨウアジサイと呼ばれます。

 

花が咲いてから日にちが経つと次第に青味を帯びてきます。

ということは,次第に植物体中のアルミニウムイオンが蓄積してきているということだと思います。

 

では,きれいな赤色を保つためには,どうすればいいのでしょうか。

植えている土をリン酸過多にすると,アルミニウムイオンが リン酸 と結合して不溶化し,

根から吸収できなくなるため,花が青くならないようです。

ということで,

青くしたくないなら,植えかえをして元肥(もとごえ)として,

アルカリ,またはリン酸肥を多めに施すしかありません。

アルカリといえば石灰を思い起こしますが,

石灰とリン酸肥を一緒に与えると,リン酸が固定されてしまいます。

 

そんな時に,アルミニウムが含まれていない “赤アジサイの土” や

赤色アジサイの土”(黄金比率培養土)というものが市販されているので便利です。

 

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アナベル

 

アナベル(Hydrangea arborescens ‘Annabelle’)

 

アナベルのように,花に色素が少ないことや,発色を阻害する成分が含まれることにより,

もともと発色しないアジサイもあるようです。

写真は,庭の花壇に地植えしているアナベルです。

セイヨウアジサイとは違い,北アメリカ東部の原種をもとに改良された品種です。

 

 

 

ヤマアジサイ

 

ヤマアジサイ(Hydrangea serrata

 

 

ヤマアジサイは,様々な色の亜種,変種,品種があります。

上の写真の庭の鉢植えのヤマアジサイのように白の場合ですが,

装飾花が白いものは,咲いてから日が経つと,白から次第に赤く色づいてきます。

これは人が太陽光に肌を長時間さらすと,紫外線から皮膚を守るために

メラニン色素 が増えて黒くなるのと似ています。

 

植物では,紫外線に弱い若葉や花被,果実を紫外線から守るために,

アントシアニン色素が増えて赤く色づくためだといわれています。

 

 

 

色々なアジサイ

 

渦紫陽花
ウズアジサイ(Hydrangea macrophylla ‘Uzuajisai’)

 

ウズアジサイ(渦紫陽花)は,オタフクアジサイとしても知られています。

 

 

 

ヤマアジサイの品種(Hydrangea serrata ‘Miyama Yae-murasaki’)

 

このアジサイは,江戸時代から知られるシチダンカ(七段花:Hydrangea serrata ‘Prolifera’)に似た品種です。

 

2017/06/18

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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