ルリカミキリによるリンゴやナシなどバラ科植物の樹幹被害
夏になると山に植えているリンゴやナシの苗木が得体の知れない虫によって樹皮に奇妙な傷がつき,
その内側がズタズタ・ボロボロに食い荒らされ,苗木が使い物にならなくなるといった
何ともひどい事件が起こっていました。
今回,その虫の実体と被害状況,その対策について触れてみたいと思います。
ルリカミキリとは
ルリカミキリは,コウチュウ目カミキリムシ科に属し,
その名のとおり,瑠璃色のようにきれいな帯紫青色で金属光沢のある
鞘翅(しょうし,さやばね)をもつ小型(体長1㎝前後)のカミキリムシです。
学名は,Bacchisa fortunei japonica (バキサ・フォーチュニアィ)。
ジャポニカは3亜種のうちの1亜種名になります。
本属はあまりメジャーなカミキリムシではないですが,
フォーチュニアィ種は,日本や中国に分布する果樹の害虫として知られ,
リンゴ,ナシ,モモ,ウメ,セイヨウミザクラ(桜桃),ビワ,アンズ,カリンなど
バラ科の生木のみに寄生する害虫とされています。
ルリカミキリは,クロウリハムシの腹部や鞘翅が少し長くなったような愛らしい姿ですが,
果樹への加害ぶりは,想像を超えています。
カミキリムシの中でも特徴的な食害痕を残すため,これだけで種を特定できるほどです。
その姿を撮影したのが下の写真です。
これはオスですが,メスの個体のほうが大きいです。
ルリカミキリによるバラ科の樹木の被害
7~8月頃になると,ルリカミキリによって,リンゴやナシ,とりわけリンゴの木が多いですが,
樹皮の内側が幼虫に食べられ繊維状にボロボロに砕けて樹皮が浮いた状態になり(このページの最初の写真),
やがてはがれて木の繊維の束がむき出しになってしまいます(下の写真)。
木の繊維がむき出しになったその上端部に,
上に凸になったU字形をした食入穴があり,穴の入り口が繊維の束でふさがれた状態になっています。
入口にフタをして穴が見つからないように穴の内側から繊維を引き込んで
カモフラージュをしているのでしょう。
この穴に栓のように刺さった繊維の束を引き抜いてみると,
下の写真の幼虫が釣られて出てきました。
体長1㎝くらいで,かなり小型のヒョロヒョロな体形ですので,
これだけの食害痕を1個体でつくり上げるとは想像もつかないです。
ですが,大顎と周囲の筋肉が発達したテッポウムシの特徴を備えています。
幼虫は,穴の深くに潜んでいて姿を見せないことのほうが多いです。
樹皮にできた食害痕の最も上端を探せば,必ずといって良いほど食入孔が見つかります。
必ず上の方に向かって穿孔していて,トンネルの長さは2~8㎝ほどあります。
ルリカミキリの幼虫の防除
ルリカミキリは,1本の木に何か所も卵を産卵しますので,くまなく探さないと,
成虫1個体で,樹皮に傷をつけて卵を30か所くらい産み付けるといわれますので,
放っておけば年々爆発的に増えてきています。
温暖化の影響もあると思いますが,発生して2年目はかなり被害部が増加しました。
一番良いのは,成虫を発生早期に捕獲して産卵させないことです。
成虫は,たいてい葉裏の葉脈の部分に止まっていて,葉脈を黒色に加害しています。
成虫を捕獲した際は,人里離れた遠くの雑木林に連れていって解放してあげてください。
その場合,一時飼育が必要ですが,湿らせた土にナシやリンゴの枝を挿して時々霧吹きをすれば十分です。
太いリンゴの木であれば,縦横無尽に穴を形成する種類のカミキリムシも混ざって穿孔していることもあり,
リンゴの場合,リンゴカミキリなどの種類の別の幼虫も確認されます。
テッポウムシ用のスプレーもありますが,
Twitterをされている方であればすでにご存知の方もいらっしゃると思いますが,
化学物質に依存する時代は終わろうとしています。
被害を防ぐためにはどうすれば良い?
5月頃から脱出孔から出てきて被害樹の葉を食害します。
葉の裏側の葉脈が黒く変色していたら要注意です。
新聞紙を巻いて樹幹を暗くするのは,木にとってあまり良いことではないですし,
時が経つとぼろぼろになり穴が開きそこから侵入することもありますので注意が必要です。
防虫ネットを1.35~1.8m幅のものを適当な幅に切って,
根元から1m高さくらいの範囲の樹幹と主枝にホッチキスなどで留めて覆っておくと良いです。
他にも方法はあると思いますが,
この方法はヒメボクトウ・コウモリガ類対策などにも役立つと思います。
ヒメボクトウによるナシの葉枝などの被害が,近年多いようです。
コウモリガなど穿孔性蛾類の被害とその対策については ⇒ こちらのページ
2018/09/18
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