ネギ,およびタマネギ(玉葱)につく害虫とその対策
春になって暖かくなると野菜の害虫の被害が,日増しに増えてきます。
ネギやタマネギなどでは,ケムシや,ネギコガ,ネギアザミウマなどによる葉,葉鞘部の食害と,
ネギアブラムシによる葉の吸汁といった被害です。
このように食害によってできた傷が収穫前にできてしまうと,ネギの場合は使い物にならなくなり,
タマネギの場合は,そこから細菌などが感染して貯蔵時に腐敗が生じる原因ともなりますので,
できる限り害虫の発生を抑えておきたいものです。
今回は,ネギやタマネギにつく害虫と,害虫を駆除するのに使用回数,使用時期などの制限のない農薬を
いくつか紹介したいと思います。
ネギとタマネギにつく害虫
蛾の幼虫
ケムシ
クワゴマダラヒトリの幼虫は,タマネギの葉を大きく食害し,被害が比較的大きい。
雑草や,クワ,キウイなどの果樹の葉や花,夏ミカンの実の皮(春先),ビワの実(5~6月)など,
様々なものを食害するため,大繁殖すると大きな被害が出ます。

イモムシ
ネギコガの幼虫は,タマネギや,普通のネギの葉に穴を開けて,中に入り込みます。
穴の開いた葉を割いてみると,葉の中に1~3個体程度が見つかり,加害痕やフンが散乱していると,
もう食べられる状態ではなくなりますので,早めの駆除が必要になります。



ネギアザミウマ
ネギアザミウマは,ネギやタマネギの葉の表面で,葉に針を刺して汁を吸います。
体長は1㎜程度で,目を凝らして観察しないと見ることができません。
姿は,幼虫では,椎茸につくトビムシによく似ています。
成虫になると翅が生えて飛べるようになりますので,アブラムシと同じく,ウイルス媒介者です。

ネギアブラムシ
ネギアブラムシは,ネギやタマネギ,ニンニクなどのネギ属の葉につき,葉の汁を吸汁するアブラムシで,
黒色をしています。
ウイルスを媒介して,ネギ萎縮病などを引き起こし,葉の成長を阻害します。

以下に,これらの害虫の農薬を紹介します。
油を主成分とする農薬
油成分で害虫の気門を封鎖し,よく知られるマシン油乳剤のような窒息効果で殺虫効果を得ます。
油といえば,ヒトでもみかんの皮などに含まれるオレンジ油を,肌に塗って陽射しの強いところへ出ると,
油焼けを起こしてしまいますが,植物も例外ではありません。
落葉樹の葉や,野菜などでは,食用油を使うと葉焼けする場合があるようです。
しかし,純度の高い精製されたものでは,油焼けの心配はないようです。
油を主成分とする農薬は,以下のようなものがあります。
オレート液剤
オレート液剤は,オレイン酸が主成分で,アブラムシやコナジラミに効果があります。
オレイン酸は,オリーブ油やアボカド油の主成分です。
本剤は,イモムシなどの幼虫も駆除できるようです。
野菜のほかに,果樹,菊,バラに対して,100倍ないし300倍希釈で,発生初期~収穫前日まで使用できます。
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サンクリスタル乳剤
ヤシ油から精製した脂肪酸グリセリドが主成分の殺虫剤で,アブラムシ,コナジラミ,ハダニ
に効果があります。
果樹や,様々な野菜,花卉,観葉植物に収穫前日まで使用できます。
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生物農薬(昆虫病原糸状菌)
ボタニガードES
ボタニガードEXという微生物殺虫剤がありますが,生き物であるため有効期間が1年と短く,
高価格ですので,規模の大きい生産農家さん向けの農薬といえます。
この微生物というのは,カビの1種,ボーベリア・バシアーナという昆虫病原糸状菌のことで,
類似の農薬に,バイオリサに使われているカミキリムシ駆除用の別種のブロンニアティ菌があります。
ボタニガードでは,バシアーナ菌が感染することによって害虫の殺虫効果を得ることができます。
バクテリアを使用したBT剤とは,殺虫機構が異なります。
バシアーナ菌が,どういったものに効果があるかというと,
野菜類では,アザミウマ類,アブラムシ類,ハダニ類,コナジラミ類,コナガ(蛾の幼虫)に適用があります。
適宜,500ないし1000倍に水で薄めて使用します。
このほか,キャベツにつくアオムシや,レタスにつくオオタバコガなどに対して使用できます。
害虫の発生初期での使用が推奨されます。
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2019/5/26
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