イチジクや桑などクワ科の生木につくキボシカミキリと,その防除・駆除について
10月に入り,イチジクの収穫も終盤になります。
イチジクの幹をみるとキボシカミキリがとまり,穴から樹液の混ざったオガクズ状のものが吹き出しています。
このキボシカミキリは,クワ科の生木の大害虫として知られています。
今回は,イチジクの害虫,キボシカミキリの被害状況とその対策についてまとめてみました。

キボシカミキリによる被害
10月中旬,キボシカミキリが,イチジクの木にとまっていました。
キボシカミキリの成虫は,クワ科の桑の木やイチジクの樹皮を好んで食害します。
西日本では,初夏と秋の年2回発生するようですので,秋に羽化した個体だと考えられます。

成虫は,クワやイチジクの木に産卵をして,幼虫がその髄の部分を好んで食べて中空にしてしまいますので,
台風などの強い風で,枝が折れてしまいます。

幹の中に幼虫がいるようで,オガクズのような糞が大量に,小孔(穴)から出てきていました。

枝を切り取って割ってみるとテッポウムシが出てきました。

キボシカミキリの防除について
成虫の防除
成虫を捕獲した場合,少しでも自然を大切にしようという気持ちのある方は,遠くの山へ放してあげましょう。
それができなければ,成虫はクワ科の植物の新鮮な生の樹皮や葉を食べて生活できますので,
虫カゴや水槽などに土を入れて水で湿らせ,イチジクの枝を何本か挿しておくなどすれば
飼う(1ヶ月ほど)ことも可能です。
イチジク(無花果)は,8~10月が主な収穫期にあたります。
日本で栽培されているイチジクの多くは,単為結果性品種とされていますので,
昆虫による受粉を必要とせずに実が生るものがほとんどです。
ですので,
キボシカミキリを防除するには,ビニルハウス内で栽培をしたり,防虫ネットを木の周囲に設置するのが
最も良い方法といえるでしょう。
というのも,昆虫に対して毒性の強いネオニコチノイド系農薬の薬害が問題になっていて,
各国でネオニコチノイド系農薬の使用が禁止されているほどの事態にあります。
国内においても,SNSで環境や人体への薬害があるといった情報によりネオニコチノイド禁止を求める声が
あがってきているようです。
使用を検討されている方は,SNSのキーワード検索で「ネオニコチノイド」などと入力して情報収集をされる
ことをお勧めします。
有機リン系の農薬の使用は論外です。
これ以外の露地栽培で,営利栽培の場合は,バイオリサ・カミキリという生物農薬を使うのがよい
とされますが,ご家庭で数本のみ植えている場合は,採算の上では不向きと考えられます。
カミキリムシを駆除するバイオリサ・カミキリについての詳細は,次のページをご参照ください。
化学合成農薬を使用しなければならない場合は,
イチジクにつくキボシカミキリに対してネオニコチノイド系のモスピラン顆粒水溶剤がありますが
モスピラン(劇物扱い)は,ネオニコチノイドの中でアセタミプリドが主成分で急性経口毒性が
最も強く,日本の残留農薬基準も世界的にも甘すぎるといわれているほどですので,お勧めできません。
どうしてもという場合には,
キボシカミキリのほかには,アザミウマ類,カイガラムシ類,イチジクヒトリモドキが適用害虫
となっていて,本剤の使用回数は3回以内です。
6月の中旬から下旬にかけて成虫が多くなり,産卵し,孵化した幼虫が枝の木部に食入するようですので,
7月頃などに注意が必要で,収穫がはじまるまでに散布することも可能です。
秋の散布は,西日本の場合,成虫が10月頃からみられ,11月頃まで活動するため,
収穫が終わった10月下旬~11月頃に様子をみて実施すると良いと思われますが覚悟して使用してください。
イチジクヒトリモドキは,ヒトリモドキガの1種の蛾の幼虫で,葉や果皮を食害しますが,
その発生時期が7月と9月以降など,キボシカミキリの幼虫発生時期と重なります。
沖縄で普通にみられていた蛾が,近年では温暖化の影響により,愛知県あたりまで北上しているようです。
幼虫(テッポウムシ)の駆除
キボシカミキリに使用できる農薬に,以下のようなものがありますが,
でき得るかぎり我慢して自然のままにしておいてあげて,来年(次回)から木に寄せ付けないよう
努力しましょう。
助けてあげれば良いこともあるかもしれません。
どうしても,農薬を使用しなければならない場合は,
イチジクを対象とするものに,ロビンフッドや,ベニカカミキリムシエアゾールといった
2つのエアゾールタイプのスプレーがありますが,後者の流通は少ないようです。
これら2つのエアゾールは,果樹類についたカミキリムシ類の幼虫に対して,
収穫の前日までに使用が可能ですので,もし,オガクズや小孔を見つけた場合,
収穫後に穴の中に噴射しておいて,1日後に収穫作業をするということが可能になります。
収穫前日といっても,すぐに捥いで食べる場合は,少なくとも24時間以上は置かなければ,
残留農薬の危険性は否定できないでしょう。
ロビンフッドと,ベニカカミキリムシエアゾールは,ともにピレスロイド系のフェンプロパトリンを含む
農薬ですので,使用回数は,同じ農薬として5回以内としてカウントされます。
ピレスロイド系殺虫剤の成分は,香取線香にも使用される除虫菊に含まれるピレトリンという成分,
あるいは合成された似た化学構造をもつ物質で,人に対しては安全だといわれていますが,
成長過程にある子どもに対して異常行動を起こす事例も指摘されていますので,
そのようなご家庭では,なおさら使用を控えるようにするべきでしょう。
ロビンフッドなどの詳細については,以下のページをご参照ください。
防除に農薬を使わなければならないという決まりはなく,
ハウス栽培をするか,防虫ネットで木全体を覆うという方法をとれば,防除は可能です。
これからは自然環境や健康に良い方法をとるよう心掛けていきたいものですね。
2019/10/19
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