ニンニクの嘉定種・・・土壌酸度調整と植付け方法
9月下旬からニンニクの植付け作業をしました。10月中旬,肌寒くなり,ニンニクの芽も伸びてきています。
今回は,嘉定種のニンニクの詳細と,畑の土壌酸度の調整,種ニンニクの植え付け方などについて,
写真を交えて,詳しく解説してみたいと思います。

種ニンニクと,その入手方法

嘉定種のニンニクは,トウ立ちして折り取らずに放っておくと,葱坊主(ネギの花)のように,
花を咲かせて生じるような黒い種ではなく,花を咲かせずに,6個ほどの小さなニンニクの鱗片のような形
をしたムカゴを生じますが,個々の花の間にムカゴが混じることもあるようです。
このムカゴを植えても,商品として販売できるような大きさに鱗茎が育つまで数年はかかるでしょう。
種ならそれ以上はかかります。
そういった理由で,ニンニクを栽培するには,種やムカゴを用いるのではなく,
栄養を蓄えた鱗茎から分けとった,1つ1つの鱗片を植え付けますので,
約9か月ほどで収穫が可能になります。

ホームセンターで,ニンニク(嘉定種)を買うと,選び方,鱗茎の大きさによって変動がありますが,
500gの中に10球かそれ以上,1kg(1000円程度)の中に20球かそれ以上の数の鱗茎が入っていて,
1つ1つの鱗片に分けると,葉ニンニクにまわすクズを除いて,食用球根目的として許容できるサイズでは,
鱗片が,それぞれ80個前後,160個前後くらいの数になります。
鱗片が小さすぎると,鱗茎が十分に肥大せず,サイズが小さく分球しないことがしばしばあります。
そういった場合は,翌年,その鱗茎を植え直したりすることもあります。
通販では,以下のように3kgや10kg単位の種用のほか,種・食用兼用などの格安のものもあります。
鱗茎がばらしてあるものは,鱗片の大きさがそろっていて使いやすいです。
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ただし,通販で1kgネットの嘉定種の白ニンニクを購入して,現在も育てているのですが,
ホームセンターで購入の嘉定種とされるものよりも,分球の度合いが原種に近く,8片前後の白味の強い鱗片
に育ちました。
1kg入りで,ばらしてあっても,220個の鱗片の中に,小さいクズのニンニクが55個も入っていたということ
もありますので,購入の際には説明をよく読むなどの注意が必要です。
ホームセンターで購入の嘉定種を植えると,2片,4片,7片などと大粒になりやすく,外見は白いのですが,
白皮を剥いでいって最も内側の薄皮は,赤味を帯びていて明瞭に区別できます。
ですので,中国産の嘉定種といっても,改良されていくつか品種があるようですので,
購入の際には,用途に合わせて検討するといったことも必要になります。
なお,嘉定種は暖地系のニンニクですので,寒冷地の場合は,価格が比較的高めになりますが,
「ホワイト六片」などの寒地系のニンニクが適していますので,そちらを購入するのが適切かと思います。
その場合は,以下に説明する嘉定種の例とは栽培方法も若干異なります。
ニンニク畑の土壌pHの調整
ニンニクは,酸性の強い土を嫌うため,植え付ける畑の土壌酸度を,適正なpH(ピーエッチ)に合わせること
が必要になります。
ですので,畑を1回耕した後,土壌酸度測定器で土壌の酸度を測定しています。
測定の仕方は,十分な量の水を測定箇所に灌水して,土に馴染むまで30分ほど置いてから,
畑を耕す深さにあたる20㎝よりも浅い深さに,電極棒を突き刺して約1分後の数値を読み取ります。
花崗岩の真砂土の場合,土壌酸度は,pH4.0~5.0,耕作土では5.0~5.5の範囲の数値を示すことが多いです。

ニンニクの適正土壌酸度は,pH6.0~6.5とされていますので,できるだけこの範囲のpHに合わせます。
目安ですので,このとおりにならなくても良いです。
土壌酸度を合わせるには,消石灰ではなく苦土石灰を使用します。
苦土石灰の量の見積もり
ニンニクは,pHを適正に整えることが大切ですので,鍬の入る約20㎝深さまで苦土石灰を耕し込みます。
ですので,深さ20㎝分の土壌の酸度を調整するための苦土石灰を投入することになります。
というのも,苦土石灰を投入後,雨も降って土が馴染んだ頃,敢えていうなら数週間後くらいに
化成肥料や堆肥を畝に鋤き込むため,10㎝分では石灰分が不足してしまいます。
【土の酸度調整の考え方】
そうすると,どれくらいの苦土石灰を施せばよいのか問題になってきますが,
畑の土の物性を調べることで,おおよその量の目安を知ることができます。
そのからくりは,土の構成粒子である石英,長石,雲母などの有色鉱物,それらの変質鉱物と,
その結晶構造にあります。
それらの鉱物粒子のうち最小の粘土鉱物は,その層間にカルシウムやマグネシウムなどの陽イオンを
吸着・固定する働きをする負の電荷を帯びています。
すなわち,シルト・粘土分が多いほど,正の電荷を帯びたカルシウムイオンが土壌に固定される量が増える
ため,カルシウム分である石灰の施用量が増大します。
畑に石灰を真っ先に施して間をおくのも,根に障害が出るからなど良くいわれますが,
リン酸やカリウムなどの溶出した肥料成分が,それぞれカルシウムと結合したり,粘土鉱物に固定される
のを事前に回避するといったことも考えられます。
粘土分が多いほど,土を細く整形しやすくなりますので,その性質を利用して土を分類し,
おおよその苦土石灰の施用量を決めることができます。
これに従うと,
pH5.0の土壌をpH6.5に合わせるとき,腐植質が少なめで砂分がシルト・粘土分よりも明らかに多い砂壌土
の場合は,畝の面積で1平米,深さで10㎝あたり255gの苦土石灰を施します。
しかし,これでは限界量200gを超え,時間が経つと土が固くなりやすくなります。
土壌酸度計の誤差もいくらかあります。
ですので,採算性も考慮して,目標をpH6.0として169g×2 (畝20㎝深さ分) の苦土石灰を施します。
牛糞堆肥や化成肥料は酸性ですので,その分は,アルカリ分の多い発酵鶏糞で調整します。

***余談***
酸性の強い真砂土壌(pH4-5)は,もともとイモ類がきれいによくできる土地ですが,イノシシの好物ですので
被害が絶えず,街中は良いですが,山間部や山に近い圃場では頑丈な柵が必要になります。
一方,安山岩~玄武岩質の風化土は,pHをほとんど合わせる必要がなくpH6付近を示すものが多いですので,
ミネラル分としてのみ苦土石灰を施せば良いため,ニンニクなど野菜の栽培には収益上も有利な土地だ
といえるでしょう。
それぞれの土地の地質や土質によって,土の酸度調整の仕方が異なるというわけです。
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堆肥と化成肥料
苦土石灰を施してから,降水があって,2~3週間後くらいに,牛糞堆肥と発酵鶏糞,化成肥料を
畝に鋤き込みます。
牛糞堆肥と発酵鶏糞は,畑の状態にもよりますが,1平米にそれぞれ1リットルずつ投入し,
緩効性(かんこうせい)の化成肥料は,80-100g(㏄)ほど施して耕します。
ニンニクは,有機質の多い肥えた土壌を好みますので,畑が新しい場合は,牛糞堆肥や落ち葉堆肥などを
多めに施して何年か土壌改良をしてから植付けるのが無難でしょう。
始めたばかりの畑ではできないことはありませんが,数年は肥大不良になりやすいです。
ニンニクは,他の野菜と比べて植付け期間が長いですので,元肥として,ネギ類専用の化成肥料(10-12-8)
などの緩効性化成肥料を使うことと,酸性雨によるpHの低下と肥料成分の流亡を防ぐために,マルチで畝を覆う
というのが一般的です。
また,追肥も重要になってきます。
植付け後,1ヶ月,寒さで成長が止まるまで(10月下旬~11月頃)に,畝間の溝に化成肥料(8-8-8)
と油粕を少量施して土に混ぜ込みます。
年が明けて3月に芽が動き始めたら,即効性の化成肥料(8-8-8など,有機配合であればなお良い)を,
約1週間以上の間隔で2回,株元に,軽く1つまみくらい(10粒弱)ほど施しますが,
降雨がなく乾燥している場合には灌水が必要です。
普通化成肥料(8-8-8)は,湿った状態であれば,おおよそ1週間くらいで肥効が弱まります。
化成肥料は酸性ですので,化成肥料が有機,苦土入りでない場合は,一緒に油粕を少量施すのも良いです。
代わりに,最初に株元に苦土石灰を適量施しておいて,液肥を土壌灌注することもできます。
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ニンニクの植付け方
植付け時期
嘉定種のニンニクの植付け時期は,8月中旬から10月と種ニンニクの説明書に記載がありますが,
寒冷地と暖地の中間地(関東~近畿~中部,中国地方の大部分と四国の北東縁あたり)では,
9月中~10月初め頃が,植付け適期になります。
暖かいと芽がなかなか出ず,鱗片が蒸れて腐りやすくなります。
芽が出ないからと水のやりすぎは腐る原因になりますので,少し肌寒くなってきた頃が良いのですが,
最近は,温暖化で秋でも暑くなってきていますので,中間地でも10月がメインになってくるかもしれません。
芽を早く出したい場合,種ニンニクを購入してから植付ける前まで冷蔵庫に入れておくのも良いです。
嘉定種の植付け時期は,地域によって異なり,寒冷地ではより早く,暖地ではより遅くなります。

畑の畝の幅と,株の間隔
畑の畝(うね)は,約1.2mほどの幅で耕し,植付ける面が幅1mほどになるよう畝を成形し,
幅135㎝の黒マルチで畝を覆います。

株の間隔は,畑の畝の向きを縦方向とすると,横方向に株間25㎝の間隔となる4列植えが一般的です。
縦方向には株間15㎝の間隔で,穴あけ器でマルチに穴を開けながら植え付けていきます。
間隔を計るには手尺(親指の先から小指の先までの長さと,親指の長さなど)を使っています。

ニンニクの鱗片は,その上端(葉の生じる尖った方)が3~5㎝になるくらいの深さに植え込みます。
寒冷地では,深さ6~7㎝くらいが良いかもしれません。
手で掘って鱗片を植え込むのも大変ですので,畝に穴を開ける道具があると便利です。
いつもは,竹や桑の枝などを切り取って棒をつくり,それにマジックで端から7㎝くらいの所に線を書き込んで
穴を開けるのに使っています。
4月になって,トウ立ちしてきたら,トウの基部あたりから摘み取ります。
2019/10/13
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