若い幹や枝(ブドウ,キウイおよびレモンなど)の髄に入り込む蛾(コウモリガ類)の幼虫

7月になり,まだ径が細く組織の柔らかい若い木を集中的に襲うコウモリガという蛾の幼虫が,

今年はたくさん被害をもたらしました。

発見が遅ければ,加害部から先の部分が折れ曲がったり枯死に至ることがあります。

蛾の幼虫は,葉を食害するものがほとんどで,一般的に見つけやすいのですが,

木の中に入り込む種類は姿を見せないため,巣の特徴などを知っておかなければ

虫の卵のうと勘違いしてしまう方もいらっしゃると思います。

このガの幼虫は,本当にひどい想定外の被害をもたらします。

今回,そのコウモリガの被害や対策について,詳しく解説してみたいと思います。

 

コウモリガの糞塊
レモンの木の新梢に寄生するコウモリガの幼虫の棲みか

 

 

 

 

コウモリガとは何者なのか

 

コウモリガは,チョウ目コウモリガ科の蛾(ガ)です。

学名は,Endoclita excrescens(エンドクライタ・イクスクリセンス)。

コウモリガの成虫は,クモの巣にかかった個体を除き,全く見かけたことがないのですが,

幼虫は苗木や植えたばかりの若木などに大きな被害をもたらす農業害虫ということで

よく知られています。

 

成虫は8~10月にかけて,最大1万個にも及ぶおびただしい数の卵を空中から投下するそうで,

植物にとってコウモリガは,空襲をしかける飛行物体のような存在です。

ただの蛾だと侮ってはいけません。

 

コウモリガの幼虫は,最初はヨモギやイタドリなどの草本に棲み付いて大きくなるといわれます。

ある程度大きくなると,若い木の樹皮を穿孔(せんこう)し,中心部の木質部や髄(ずい)の柔らかい部分

を狙って食入していきます。

 

コウモリガの巣の材料
コウモリガの幼虫の糞塊の材質(吐き出した糸で頑丈に固めてある) 7/7

 

その事例が生じたのが,7月に入った頃の話で,

被害樹の根元付近や若い枝に糞塊(ふんかい)と呼ばれるものを見かけるようになりました。

糞塊は,糸を吐き出してオガクズのような細かい糞がドームのような形に編み込まれ,

それが出入り口の穴を隠すように作られています。

 

木の中に穴を開けて入り込む幼虫は,コウモリガの幼虫だけではありません。

目の前にいる被害を与えた虫の幼虫の種類がわからなければ,

有効な対策をしたり,その虫に効果のある農薬を使用することも難しいです。

幼虫の種類がたくさん載っている図鑑もあります ⇒ こちらのページ参照

 

以下に,これまでの被害例とともに,対処のしかたなどをまじえて紹介したいと思います。

 

 

コウモリガによる被害例

 

これまで被害に遭ったことのある作物や樹種などは,以下になります。

 

果樹: ブドウ・キウイの根元付近と中間付近,ナツメ,クリ,レモンの若枝,

フェイジョア・イチョウの若木の根元付近

花卉: クロスコミア(アヤメ科)の茎

野菜: ナスの主枝の中間付近,ミョウガの葉の茎

樹木: クサギ,キリ(桐),コナラ,ナンキンハゼの若木の根元付近とその上1~2mの範囲

 

 

ブドウ(ピオーネおよびデラウエア)の幹や枝の被害

 

 

ピオーネのコウモリガ被害
ブドウの品種,ピオーネの株元に穿孔したコウモリガ幼虫の被害

 

ピオーネの苗木を本植えする前のことです。

仮植えをしておいたのですが,接ぎ木の台木のところに糞塊がついていたので,

取り除いてみると,大きな穴が開いていました。

 

 

デラウエアのコウモリガ被害
ブドウの品種,デラウエアの枝につくられたコウモリガ幼虫の巣

 

種なしブドウのデラウエアの木ですが,枝の被害に気が付いたときは幼虫が抜け出した後でした。

植えたばかりで枝が細かったので,髄の食害部は5㎝くらいの範囲でしたので別の枝に寄生した可能性が大きい。

 

 

 

 

キウイフルーツの木の被害

 

キウイのコウモリガ幼虫被害
キウイフルーツの若枝の根元付近につくられたコウモリガ幼虫の糞塊

 

被害に気付いたときは,キウイフルーツの木の周りにたくさんヨモギが生えている状況でした。

コウモリガは,キク科のヨモギセイタカアワダチソウのあるところを目がけて卵を落とす可能性があります。

被害を受けたのは,明らかにこのヨモギが原因です。

コウモリガの巣は根元付近だけではなく,その1m上のほうにもあって,

枝は巣孔の入り口のところで折れかかっていたので,

折り取って皮を剥いで中をみてたところ,下の写真がその時の様子ですが,

驚いたのか慌ててコウモリガ幼虫が出てきました。

 

キウイフルーツの若枝の中で髄を食害するコウモリガ幼虫

 

 

 

レモンの木の被害

 

カンキツ類がコウモリガの幼虫の被害にあうのは今年初めてのことでした。

 

コウモリガによるレモンの若枝の被害
レモンの若い枝につくられたコウモリガの巣孔

 

レモンの若枝の髄の中は柔らかいので,食べ尽くされていました。

 

コウモリガ幼虫によって食い尽くされたレモンの若枝の髄

 

下の写真はこの髄の部分でうごめいていたコウモリガの幼虫です。

乳白色の体色を基調として褐色の斑点をもつ個体をよく見ます。

01,01,01,・・・という褐色模様が特徴的です。

0や1の部分が左右2つに分かれている場合もあります。

 

Endoclita excrescens
レモンの緑枝の髄から取り出したコウモリガの幼虫

 

水分の多い木の場合,斑点の部分が乳白色をした個体もいるようです。

乾燥すると褐色になるということです。

レモンの若枝は樹液がかなり多いためか,皮膚がふやけたようになっていました。

 

レモンの若枝の髄にいたコウモリガの幼虫

 

 

 

イチョウおよびフェイジョアの被害

 

いづれも木の中心部が堅く穿孔しにくい樹種で径が2㎝ほどの細い木です。

樹皮部分を1周食い尽くすまであきらめようとしなかったようです。

 

イチョウの若木の場合,

木の樹皮を1周取り巻いた溝状の食害痕がみられただけでした。

形成層までは柔らかいので食べてしまい,木質部には堅くて入り込めず,あきらめたようです。

 

イチョウのコウモリガ幼虫被害
イチョウの若木の株元がコウモリガ幼虫に削られた跡

 

上の写真のように,葉でつくられた養分が根に送られる師管の部分まで削られているため,

削られた部分より下に葉が芽吹いてきています。

この場合は,木全体は枯れず,うまくいけば成長とともに削られた部分は癒合していくと思います。

 

 

フェイジョアの若木の場合,

1周食い尽くした後も,少し成長してパワーアップしたのか,

木の中心部に食い入ろうとした跡がみられました。

 

コウモリガの幼虫による被害
フェイジョアの株元付近のコウモリガ幼虫による食害痕

 

発見時に,針金を穴に差し込んで刺すとよいとされているので,針金の先でつついてみましたが,

上に向かって1㎝ほど穿孔していて,中心部には達していませんでした。

応急処置として,幹に新聞紙を巻いて保護して帰宅しました。

次の日に,新聞紙を取り除いてフェイジョアの株元を見てみると,

糞塊を取り除いたときに逃げた可能性のある個体がやってきていて,

木に登れなかったからなのか,木の地際を食べて削っている最中でした(下の写真)。

 

コウモリガの幼虫
フェイジョアの株元を食害していたコウモリガの幼虫

 

フェイジョアは,使用可能な農薬の登録がないようなので,

勝手に農薬を使用すると人体に害が生じる可能性を孕んでいますので,無農薬栽培をするほかない作物です。

現在は,コウモリガによって削られた溝と穴を,形成層の癒合を促進するために,

カルスメイトで埋めてふさぎ,木の幹に新聞紙を厳重にヒモで縛りつけ,

地際は土をかぶせて保護しています。

カルスメイトの詳細については ⇒ こちらのページ

 

カルスメイトの効き目
カルスメイトを塗布して12日後のフェイジョアのコウモリガ幼虫の食害痕

 

現在,経過は上の写真のとおり順調にカルスが形成されているところですが,

樹勢が弱るようであれば,株元の被害部より上部に土をかぶせて発根を促すしかないです。

 

 

 

クロスコミア(モントブレチア)の茎の被害

 

コウモリガはアヤメ科の植物も襲うようです。

 

コウモリガ幼虫による被害
クロスコミアに寄生したコウモリガ幼虫の糞塊

 

 

コウモリガの防除

 

コウモリガの被害を防ぐためには

産まれたばかりの若令幼虫は,最初,草が生えてくる時期にキク科やタデ科などの

雑草の茎(くき)に入り込むということですので,

春に雑草が萌芽してきて,草取りをせずに放置しておくと繁殖しやすいようです。

ですので,こまめに草を刈って,地面をネジリ鎌などで削り取るか,あるいは防草シート,光を反射する素材

などを設置して,周囲をきれいにしておくことがコウモリガの防除につながるということがわかりました。

~虫は反射光が嫌い~

虫は反射する光を嫌うという習性があるという話をよく見聞きします。

株元の地面に敷きつめるための光反射資材があります。

ネオポリシャインという果実全般向けのマルチで,防草効果もあります。

ネオポリシャインについては ⇒ こちらのページ参照

 

コウモリガの幼虫は,草の茎から出てきた若齢幼虫が,径10㎝前後までの若い木の樹幹に食入する習性

があり,幼虫が地面付近だけでなく,樹幹をかなり登って食入することもしばしばあります。

 

コウモリガに適応する農薬がない樹木も多くあります。

 

適用できる農薬がないか,あるいはある時のどちらの場合も,株元や木全体を防虫ネットで覆ってしまう方法

環境保全上,健康上において最善の策だと感じています。

大きな木では,ホームセンターなどで市販されている畑の畝用の防虫ネットを,長さ3mくらいに短く切り,

幹まわりに巻いて土などで押さえ,コウモリガ幼虫に食入されないように保護します。

この際,網をホッチキスで仮止めした後,釣り糸などで縫合しておくと良いです。

ホッチキスだけでは1年内には錆びてもろくなってしまい,とれてしまう場合があります。

 

キウイの場合は防除するにはキウイの樹幹のできるだけ高い位置(できれば高さ2~3m)まで

防虫ネットを設置しておくという方法が良いです。

キウイ棚の上は,受粉作業の前後の時期に,また別の蛾が幹や枝の節あたりに穿孔して穴を開け,オガクズを

出していますので,注意して見回ることが必要になります。

 

コウモリガは,卵から孵化して2年目の夏,幼虫が体長4~6㎝ほどに成長すると巣孔の中でサナギになって,

8~10月になると羽化して,11月頃まで交尾をして産卵をしますので,早めの対処が重要になります。

 

 

農薬

農家さんが栽培するきれいな作物は,たいてい農薬が合法的に適度に使ってあるといって良いと思います。

しかし,有機リン系やネオニコチノイド系などの農薬は,基準を満たしていても健康上の安全性が疑問視されて

います。

諸外国では,ネオニコチノイド系農薬の使用を禁止する方向へと舵が切られています。

国内外の情報や色々な方の意見を知りたい方は,ぜひ,SNSのほかYouTube動画などのキーワード検索窓に

「有機リン ネオニコ」などと色々と単語(複数並記も可)を入力して情報収集されてみて下さい。

調べてみるとわかりますが,自家栽培していないものは農薬づけのものを買って食べることになります。

自家菜園で自家用に作物を栽培する時くらいは,農薬や除草剤を使用せずに育てたいものですね。

最近,テレビでもよく耳にするようになったSNSの情報ですが,上に挙げたワードで検索してみても

わかるように世論は急速に変貌してきています。

 

どうしても農薬の散布が避けられない場合は,使用しなくても良いよう改善されてください。

コウモリガに適用のある農薬は少ないなか,ブドウではガットサイドS が登録されていて,

他の作物では,クリ,クルミも対象となっています。

ガットサイドの成分は,MEP乳剤(フェニトロチオン)です。

これは,有機リン系殺虫剤で,かなり昔から広く使用されてきたスミチオン乳剤と同じ成分です。

安全だと言われながら,その危険性はご存知のとおり,

ゴキブリ退治などの家庭用殺虫剤では有機リン系のものは使われなくなりました。

というのも,MEP乳剤(フェニトロチオン)は有機リン系の殺虫剤ですので,

ヒトの脳神経にも影響し,使い方を誤ると中毒症状が出る恐れがあります。

散布時や散布後に子どもへの曝露を避けるなど特段の注意が必要です。

また,光により性質が劣化・強毒化しますので保管場所にも気をつける必要があります。

暗く涼しい場所で鍵のかかるスチール製の棚が良いです。

 

イチョウの樹幹では,コウモリガだけでなくヒメボクトウ(ボクトウガ類)にも食害を受けるようです。

銀杏(ぎんなん)の栽培をされている生産者さんの場合は,

ガットサイドと同じ成分のスミチオン乳剤のイチョウ樹幹散布でこれらの蛾への適用があります。

 

 

コウモリガに似た習性をもつ蛾の幼虫

 

幼虫で似たような種類は色々とありますが,

樹木に穿孔して食害するものに,

コウモリガと同じ仲間のキマダラコウモリ

スカシバ類(正しくはスカシバガ類)のクビアカスカシバブドウスカシバ

ボクトウガ類のヒメボクトウ,ゴマフボクトウなどがいて,

果樹などの生産者さんには害虫として認識されています。

 

スカシバ類によるブドウおよびキウイフルーツの木への被害対策

 

ブドウの場合

ブドウの枝を襲うことで名高い,スカシバ類は,その名のとおり翅(はね)が透き通っていて,

スズメバチなどの蜂に似ています。

ブドウの木で使用できる農薬としてネオニコチノイドスタークル顆粒水溶剤(塗布1回以内)が効果がある

ようです。

1つの木への塗布は,幼果期(遅くても収穫30日前)までに1回限りということになっています。

幹や枝の粗皮を剥がして塗布します。

現在,この防除方法では,ブドウに対してクビアカスカシバコナカイガラムシのみ適用があります。

使用の詳細は,山口県作成のpdf.ファイルがあります。

なお,スタークル顆粒水溶剤は,ネット通販で入手しにくく,

同じ成分を含むアルバリン顆粒水溶剤でも,ブドウに対して同じ防除方法での適用があります。

 

また,スカシバ類に対しては,ネライストキシン系パダンSG水溶剤(×1500散布)が大粒種ブドウにおいて

のみ適用があります。

小粒のブドウに関してはスミチオン乳剤でブドウスカシバに対する適用があります。

ブドウの粒の大きさに関係なくガットサイドSがクビアカスカシバに適用があります。

 

ヒメボクトウやクビアカスカシバの駆除に使える噴射式スプレーは ⇒ こちらのページ

 

キウイフルーツの場合

キウイフルーツなどに関しては,現在のところ,法律でブドウと同じ防除方法を適用することができませんが,

コナカイガラムシを防除できるレベルでのスタークル顆粒水溶剤の散布はできないことはないようです。

キウイフルーツで,キイロマイコガに対してパダンSG水溶剤の散布ができますが,

キイロマイコガは幼虫が果実を食害するので,農薬の散布箇所と使用目的が異なります。

 

最後に

規定の方法以外の農薬使用は法令違反になる場合がありますので注意が必要です。

なお,上に記載している農薬やその使用方法は現時点でのものです。

今後,農薬が使用禁止になったり,対象となる作物や適用害虫が変更または削除されたりする場合があります。

農薬使用前に必ずメーカーのホームページなどで農薬登録状況や使用方法などの確認が必要です。

 

近年,農薬・除草剤などの化学物質による地球の環境汚染や自然環境破壊の影響で地球上の生き物が

急速に絶滅に追いやられているのはご存知と思います。

因果応報,これから数十年内に想定を超える天変地異(震災,豪雨災害,海面上昇,気候の極端化など)

が現象化するといわれています。

原因をつくったのはヒト中心の社会であって,他の動植物がその巻添えにあってしまっています。

これからは大洗濯セレクションの時代で,世界でも終末が近づいたといわれていて,

これらは,それぞれ時代の全く異なる別々の分野からの情報ですが符合する点がみられます。

SNSYouTubeを見られて,何年も前からこの危機に気付いて行動に移していらっしゃる方も多いです。

色々と検索されてみてください。

自然環境の汚染(農薬や除草剤,合成洗剤などの身の回りの化学物質の使用)を止め,山林などの破壊を

今すぐにでもくい止めなければいけません。

現状に甘えつづけてきた結果が現在です,自らに実害が出てやっと気付いたときにはもう手遅れ,

行動を起こすのをためらうといったことは日本人に少なくありません。

地球はすでに歯止めがきかない状態といってよいほどです。

来たる危機を少しでも遅らせることができるよう,自然環境,動・植物を大切にしていきたいものですね。

2018/07/27

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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