ナガゴマフカミキリの防除・・・キノコのホダ木の寿命を縮めるカミキリムシ
9月に入り,シイタケやナメコ菌の種駒を植え付けている榾木(ホダギ)のほうから
カチカチカチカチと得体の知れない音が聞こえてきました。
耳を澄ますと,榾木の樹皮の内側から聞こえてきたので,
樹皮をはぎ取ってみると,中からカミキリムシの幼虫であるテッポウムシが現れました。
テッポウムシは,榾木の寿命を短くする根源です。
今回,このカミキリムシの正体を明らかにし,その被害の防除について考えます。
![カミキリムシによる榾木の食害](https://i0.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Log-cultivation_hodagi-of-shiitake-mushroom-500x375.jpg?resize=500%2C375)
キノコの榾木を食い荒らすカミキリムシは何者なのか
榾木の樹皮を剥いで出てきたテッポウムシは,どんな種類のカミキリムシなのでしょうか。
ひと昔前,自宅の片隅で,シイタケの榾木(ほだぎ)が古くなって放置していた時のこと,
朽ちたホダ木の皮を剥いで割ってみると,コクワガタのオス・メスの成虫だけでなく,
その幼虫やサナギがたくさん出てきたことがあります。
今や,カブトムシやクワガタは,キノコの菌床栽培で用いた菌床オガクズを使って
飼育するのが主流になっていますが,
自然の中では,クワガタは,キノコ(担子菌類)によって腐朽の進んだ柔らかい朽木のなかに産卵し,
ここで孵化して,菌糸の蔓延した朽木(くちき)を食べて育っていたのだということを知りました。
光合成をせずに,カビやキノコの菌糸から栄養を補給してもらって成長する植物(菌従属栄養植物)
もあるくらいですので,菌糸はそれだけ栄養が豊富だということですね。
ゴマダラカミキリなどの幼虫も,テッポウムシといいますが,
この種類は,生きた木の中に穿孔して成長し,成虫が木の根元に大きな穴を開けて出てくるものもいれば,
カブ・クワのように,菌糸の蔓延したホダ木を好んで食べるカミキリムシ幼虫もいるようです。
当然,自然の中では倒木に菌類の胞子が飛んできて菌糸を伸ばし,次第に腐朽がすすんでいきますので,
人工的なホダ木でなくても,もともとは倒木やその朽木につく種類だということですね。
カミキリムシのエサを人工的に用意してあげたといっても,言い過ぎではないので,
被害にあうのも当然ですし,本当に皮肉なものです。
7月の上旬くらいに,ホダ木のたくさん置いてあるホダ場には,
カミキリムシの成虫がたくさん飛来し,産卵をします。
ですので,7月上旬の終わりごろにもなると,ホダ木からオガクスが出はじめます。
![カミキリムシ被害](https://i0.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Early-pest-damage-of-shiitake-mushroom-bed-log-by-larvae-of-Mesosa-longipennis-500x333.jpg?resize=500%2C333)
上の写真のように,ホダ木の樹皮の割れ目などの産み付けやすいところに産卵しています。
孵化した幼虫が穿孔するときに,チューブのように伸びたオガクズ(径1㎜くらい,長さ1~1.5㎝)が,
アーチ状に形成されるようです。
とくに多い種類が,ナガゴマフカミキリです。
![カミキリムシ被害](https://i2.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Longhorn-beetle_Mesosa-longipennis_Nagagomafukamikiri-500x345.jpg?resize=500%2C345)
ときどき,下の動画のように変わったカミキリムシも見ることがありますが,
ナガゴマフカミキリが圧倒的に多いです。
ナガゴマフカミキリとは別属に属するシラホシカミキリというカミキリムシです。
夏場にホダ場へ行くと,いつものようにポタッと音がするので,ホダ木の下を探してみると,
ナガゴマフカミキリがあお向けになって転がっています。
![カミキリムシ被害](https://i1.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Tonic-immobility-of-Longhorn-beetle_Mesosa-longipennis-500x375.jpg?resize=500%2C375)
ですので,ホダ木にとまっているナガゴマフカミキリの写真を撮ることは意外に難しいです。
人の気配がなくなったら,起き上がって逃げるという感じです。
ホダ木の中から奇妙な音がする
8月も終わりの頃になりますが,孵化した幼虫もすでに大きくなり,
カチカチカチ・・・と音のしてくるホダ木の樹皮をはぐと,中からテッポウムシが出てきました。
樹皮の下の柔らかい部分,とくに,菌糸の蔓延した形成層から外側の組織が,
ほとんど食い尽くされていました。
木質部は,幼虫にとってはまだ堅すぎるので歯が立たないということでしょう。
![榾木のカミキリムシ被害](https://i2.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Larva-of-Longhorn-beetle_Mesosa-longipennis-500x354.jpg?resize=500%2C354)
幼虫(テッポウムシ)がカチカチと音をたてているところを動画に撮っています。
最初に音を聴いたときは,何?????と気味が悪かったのですが,
やっと状況がつかめました。
![榾木のカミキリムシ幼虫による被害](https://i1.wp.com/fujigasako.com/wp-content/uploads/2017/09/Mandibles-of-Mesosa-longipennis-larva-500x357.jpg?resize=500%2C357)
上の写真でわかるように,強靭な大顎(おおあご)を使って,
菌糸の蔓延している樹皮の下の維管束を食いちぎって音を立てているということがわかりました。
ホダ木を虫食むナガゴマフカミキリの幼虫の防除
キノコの種菌を植え付けたホダ木を本伏せしたホダ場のまわりに,
広葉樹の伐倒木や枯れ木などがある場合は,
放っておくとこれに菌糸が蔓延してカミキリムシなどの害虫が繁殖してしまいますので,
菌糸が蔓延する前,つまり気温が暖かくなるまでに取り除いて,
地面に穴を掘って埋めてしまったほうが良いです。
テッポウムシの被害に遭うと,ホダ木の最も重要な部分が,
あっという間に根こそぎ食い尽くされてしまいますので,
一番良いのは,ホダ木を防虫ネットで覆ってしまうと,
カミキリムシがホダ木に産卵できなくなるので,テッポウムシによる食害を免れ,
ホダ木の寿命を延ばすことができます。
現在,林内で,シイタケとナメコ,キクラゲを原木栽培しているのですが,
ほだ場全体を防虫ネットで覆い,地面は草が生えないように防草シートを敷いています。
大規模経営でなければ,
このほうが,ヤマナメクジやトビムシの被害を抑えることができ,衛生的で良いと感じています。
鉄パイプを使うと耐久性が良くていいのですが,
竹の杭を4隅に打ち込み,針金を使って組み立てて骨組みをつくっています。
針金は,通常の鉄製では細すぎても太すぎても,ペンチでねじって締め付けている時パチッと切れやすいです。
不良品ではないかと思われるほど切れやすい太さの針金もあります。
ステンレス製の針金は,高価ですが粘り気があって引張り強度も格段に強いですのでこちらのほうが良いです。
ノコギリで竹に溝をつけて針金を締め付けないと,
時間が経って竹が乾燥収縮してしまうので,ずれ落ちやすくなります。
使用する針金は,径が1.2 ㎜くらいのものがちょうどいいですね。
防虫ネットは,1.8 m幅のものをつなぎ合わせて使っています。
ご家庭で,少数のホダ木でキノコ栽培をされる場合は
楽天市場に森産業さんが出している
“キノコ害虫防除ネット”というものもあります。
この商品は,細めのホダ木を2本入れることができ,
ナメクジやダンゴムシ,トビムシ,カタツムリ,シロアリなどの侵入を防ぐことができます。
カミキリムシも,ホダ木に直接卵を産み付けることができないので,
産卵も防ぐことができると思います。
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2017/09/07
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