青枯病(あおがれびょう)ほか・・・シシトウの葉がある日突然しおれる
9月の半ば,畑に行くとシシトウの葉が突然,まだ青い状態でしおれていました。
他のシシトウの葉は変わった様子はありませんでした。
こうした葉が萎凋するといった症状の病気はどうして引き起こされるのでしょうか。
今回はこのシシトウを枯らす病気についてづづってみました。
シシトウを枯らす菌類
シシトウは,ナス科に属する野菜で種から育ててみると,
夏から秋にかけて毎日たくさん収穫ができて大変たのしい野菜です。
味は苦いですが,天ぷらのほかに,
焼き鳥(鶏のもも肉かむね肉の間にネギ・シシトウ・タマネギを刺して串焼き)など
にして食べると美味しいですね。
余談をしてしまいましたが,
ある日突然,下の写真のように葉がなえてしまって枯れるという事件がたまに起こります。
このような症状は,青枯病のほか,白絹病にかかることで引き起こされます。
青枯病(あおがれびょう)
青枯病というのは,ナス科に属する野菜を蝕む病原細菌のしわざで,
その細菌の学名は,Ralstonia solanacearum (ラルストニア・ソラネイシエイラム)といいます。
種名のsolanaceaは,ナス科(Solanaceae)を意味します。
βプロテオバクテリア綱 バークホルデリア目 シュードモナス科という
聞きなれない分類群に属します。
高次分類群名にもあるように青枯病菌は,バクテリアの1種ということがわかります。
バクテリアは,英語でbacillusまたはbacterium(-teria: 複数形)といいますね。
バクテリア=細菌です。
この青枯病菌は,維管束系(道管や師管など)を詰まらせて葉に水分を供給できなくしてしまいます。
根から葉に水分を供給する通路である道管が詰まってしまうと,
必然的に葉がしおれるという症状が出るのはよくわかりますね。
師管は,道管の外側にあり,葉でつくられた栄養分を根に運ぶための通路です。
ですので,これがダメージを受けると植物が枯れてしまいます。
青枯病菌は,大腸菌や黄色ブドウ球菌などと同じ細菌の仲間です。
細菌というのは,単細胞生物で,細胞分裂で1個体ずつ増えていきます。
ですので,気温による温度条件や畑の土壌pHなどに影響されやすく,
当然,水分が多いと活動が活発になります。
それなら,青枯病菌の制御は簡単ではないかと思われるかもしれませんが,
そう簡単なものではないですので,解決策を紹介したいと思います。
青枯病の防除策
青枯病は,細菌感染が原因の病気ですので,
ヒトのように抗生物質を投与すれば治るかもしれませんが,
そのような細菌に侵されたような作物は,もう食べたくありませんね。
売ってしまうのもどうかと思います。
感染した株はただちに抜き取って,圃場の外まで持ち出し,
シシトウの根群域の汚染された土も一緒に捨てるようにしています。
さらに,青枯病菌は海水(pH8前後)が良いということですので,
抜き取った後の穴に,即効性のある消石灰をpH8以上になるくらいの量を
根群域に混ぜ込んで水をかけておくと良いです。
そうすれば,他に感染が拡大することをある程度は防げるのではないかと考えています。
極端な話ですが,
畑全体の土壌pHを8以上にして消毒するのは,畑をダメにする無謀な行為です。
それよりも悪さをする悪玉細菌を繁殖させないフカフカの土づくりが大切だと思います。
ボカシ肥を使うのも1つの手段と思いますが,作るのに手間がかかります。
竹酢(スポンサードリンク)を’施用して,悪玉菌を死滅させて善玉菌を増やす
というやり方もありますが,
その善玉菌のエサになるものがないと意味がありません。
ですので,ある程度の有機物は必要です。
竹酢や木酢を施用すると,虫の忌避効果もあるようです。
あと牡蠣殻石灰(スポンサードリンク)も良いと聞きます。
青枯病菌は,バクテリアですので水分が多いと元気になります。
畑の畝は,排水を良くし,雨がたまったりして根腐れなど起こさないようにするためにつくるものですので,
できるだけ高畝にし,水はけの良い状態にして育てると良いと思います。
あと,青枯病菌は,根に傷がつくとそこから,細菌が侵入して悪さをするようです。
畝にモグラのトンネルがつくられていることがよくあるので,
根に傷がつく原因にもなっている可能性があります。
モグラ穴にはネズミやヘビ,トカゲなども出入りするので,
まず,モグラにトンネルをつくらせないようにする必要があると思います。
モグラ除けの例 ⇒ こちらのページ
また,作物の根のまわりによく棲みついているコガネムシの幼虫にも注意する必要があります。
根を食い荒らしてしまいます。
コガネムシは,夏の間に株元に産卵するそうですので卵を産ませないように注意する必要があります。
白絹病(しらきぬびょう)
白絹病は,Athelia rolfsii (アセリア・ロルフシアィ)という担子菌類が原因で起こる病気です。
担子菌類は,多くのものがキノコを形成する菌類です。
下の写真のように,根っ子や,茎の地際付近が絹糸光沢のある菌糸に覆われて,
道管部分まで蔓延してしまうと水分の供給が断たれ,葉が萎凋(しおれた状態)を起こすというもので,
そのまま枯れてしまいます。
ですので,症状を回復することは困難です。
病気の原因については,
土壌が,比較的高温で加湿状態になると,土壌中の有機物が腐って菌類が蔓延しやすくなり,
そのうち根っ子や茎まで菌糸が侵入して枯れるということですね。
水をやりすぎると,根腐れを起こすというのも,そういった要因も含んでいると思いますが,
根腐れには,肥料のやりすぎによる肥焼けや,土壌温度の上がりすぎなどの場合もありますので,
一概に言えません。
肥料として施す堆肥が,十分に発酵しているとそれ以上,腐朽の進みにくい状態ですので,
ボカシ肥や完熟堆肥を使うのもひとつの手段だと思います。
菜種油粕や野菜くずなどは腐りやすいので,ナス科の野菜には不向きです。
ナスや,トマト,ミニトマトでは,ある程度大きくなると株元の葉から萎れ,黄色くなり枯れるという
萎凋病(いちょうびょう)が発生しますが,これも土壌中の菌類が原因です。
加湿状態を避けるには,上述したように高畝にして水はけを良くすると良いです。
あとは,青枯れ病への対策も兼ねて色々と工夫してみるのも良いと思います。
2016/9/25
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