原木シイタケの傘に大きな食害痕・・・その主犯格はナメクジかゴミムシダマシか

今年も,秋が深まってきて原木椎茸の収穫がはじまりました。

そこで,菌床栽培とは異なり,待ってましたというようにシイタケを虫ばむものが現れます。

常習犯となるのは,ヤマナメクジ,ゴミムシダマシ,トビムシといったマイナーな生き物ばかりです。

キノコ栽培の敵は,スエヒロタケ,クロコブタケ,カワラタケといった害菌やテッポウムシだけではないので,

榾木の管理は,落ち着くまでは非常に大変で奥が深いといえる作業になります。

今回,色々な動物によるシイタケの被害状況その大きさについてつづってみました。

 

椎茸の原木栽培をしているところ
シイタケのホダ場

 

 

 

椎茸などの栽培されたキノコを食害する主犯格は?

 

現在,シイタケの榾木(ホダギ)を設置している山林は,竹林に取り囲まれた半日陰地ですので,

ごく普通のナメクジは見かけず,キノコの季節になるとヤマナメクジがいつも姿を現します。

トビムシも雨が降るとよく発生します。

榾木に集まる昆虫には,ゴミムシダマシ類やクチキコオロギなどがいます。

 

これらの生き物の中でどれが一番,シイタケに大きな被害をもたらすでしょうか。

これから紹介していきたいと思います。

 

 

ヤマナメクジによるシイタケの食害

 

ヤマナメクジは,体長が15㎝にもなる巨大なナメクジで,

キノコを食べる量も非常に多いですので,それだけ被害も大きいです。

下の写真は,これでも小さいほうになります。

 

山蛞蝓
温州みかんの木の根元に現れたヤマナメクジ

 

ヤマナメクジは,シイタケの榾木の洞(うろ)の中や,地際などにいつも隠れていて,

姿を見せることは,あまりありません。

ですので,たくさんある榾木を入念に探しても見つからないことが多く,非常にやっかいな生き物です。

下の写真は,竹の枝を使って洞からほじくり出してきたところです。

 

シイタケの食害の主犯
ホダ木のうろの中にいたヤマナメクジ

 

ヤマナメクジの食害痕は,下の写真のような感じです。

この場合は,採餌を被って数日たっているので,食害痕がやや平滑になっています。

 

ナメクジによる食害痕
ヤマナメクジによって食害を受けたシイタケの傘

 

これを裏返してみると,ヤマナメクジが,傘のひだの部分に隠れていました(下の写真)。

雨のあとでしたので,トビムシもたくさん,ひだの間に点々と挟まって見えます。

 

シイタケの食害の主犯格
シイタケの傘の裏に隠れたヤマナメクジ

 

下の写真は,採餌されて間もない食害痕(真ん中)と,数日経過した食害痕(左端)が混ざっています。

このように,榾木の地際部が,かなり食害を受けやすいです。

 

ヤマナメクジによって食害された榾木の地際に発生したシイタケ

 

 

ゴミムシダマシによるシイタケの食害

 

ゴミムシダマシは,肉食でごみ溜めにいる汚いイメージのゴミムシと姿が似ていますが,

菌類や腐植などを採餌する甲虫ですので,近縁ではありません。

草取りなどをしていて,ゴミムシダマシに触れると,

紙粘土のような匂いが濃縮された臭いガスを噴射されて,指が紫黒色に変色することがよくあります。

指に油性マジックで大きなホクロを書いたような感じで,1ヶ月くらいの間なかなか消えません。

 

今回,シイタケに被害をもたらしたのは,ゴミムシダマシ科の甲虫である

ユミアシゴミムシダマシです(下の写真)。

 

榾木にとまるユミアシゴミムシダマシ

 

ユミアシゴミムシダマシによる食害痕も,ヤマナメクジに劣らないように見えます(下の写真)。

 

菌食のゴミムシダマシによる食害痕
ユミアシゴミムシダマシによって食害されたシイタケの傘

 

ヤマナメクジのように,1つ1つかぶりついた痕が浅く滑らかでなく,

ユミアシゴミムシダマシでは,かぶりついた痕が1つ1つ細かく,全体的にみると深いのが特徴です。

 

大きな被害をもたらす主犯格は,どちらかといえばヤマナメクジのほうだと思います。

というのも,ゴミムシダマシは,冬になると姿を見なくなりますが,

ヤマナメクジは冬の間も採餌を続けるようです。

 

 

シイタケのトビムシ被害

 

椎茸のトビムシ被害
トビムシによる食害で穴だらけになったシイタケ

 

シイタケの柄を割ってみると,トビムシがたくさん出てきました(下の写真)。

 

シイタケの柄に穴を開けて食害するトビムシ

 

ホダ場に防草シートを設置してきれいに掃除をしていても,

降雨の後,トビムシは発生しました。

 

トビムシの被害は早いうちに収穫すれば穴を開けられずに済むので,

シイタケの傘が開いたらすぐに収穫するようにしています。

水に浸けておくとヒダの間からトビムシが浮いて出てくるので,食べられないことはないですね。

 

 

そのほかの菌類に引き寄せられる虫

 

榾場では,コオロギの鳴き声が聞こえることがたまにあります。

クチキコオロギですが,シイタケに直接の被害はありません。

 

菌糸の蔓延した柔らかい朽木を目当てに来ているようで,害にはならないということで,

見て見ぬふりをしています。

キクラゲの榾木ばかりに集まっているので,キクラゲの菌糸が好物のようです。

 

 

まとめ,及び身近な危険

 

シイタケの被害は,とりわけヤマナメクジとユミアシゴミムシダマシによる被害が大きく,

ヤマナメクジの被害が最も深刻です。

ナメクジに食害されたシイタケは,衛生上良くないということで廃棄しています。

ナメクジには,細菌や寄生虫(広東住血線虫)といった病原体が存在するという話を聞きます。

日本国内の在来ナメクジはそのような心配はないということなのですが,

ヤマナメクジほどの大きさになるマダラコウラナメクジという危険な外来ナメクジが入ってきて,

繁殖域を拡大しているので,一概には言えないように思います。

東日本で拡大中で,西日本にもそのうち入ってくることは避けられないでしょう。

マダニのように特定の個体が病原体を保持していて,たまたま感染するといったケースもあるわけで,

侮れないと考えています。

ユミアシゴミムシダマシに食べられたシイタケは,あまり気持ちの良いものではありませんが,

食害された部分を切り取って自家消費しています。

2018/12/12

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です