シカ(鹿)によるカンキツ類の葉の食害および枝や幹の損傷
鹿による害といえば,スギ・ヒノキなどの植林地における樹皮の食害が昔からよく知られていますが,
昨年の秋から今年にかけて,温州ミカンをはじめとするカンキツ類の果樹の鹿による被害が多発しました。
カンキツ園では,50年以上,今回のような事例は全く見られませんでしたので,
イノシシによる獣害や虫害と同じく,近年かなりの異変を感じ取ることができます。
今回は,鹿による柑橘類の被害状況について報告したいと思います。
鹿による被害状況
ミカンの果実の食害
最初は,温州ミカンの木の枝が無残に折られていて,ミカンの皮があちこちに散乱していたため,
カラスが喧嘩して暴れて折れたのかと勘違いして楽観視していましたが,
日が経つにつれ被害が深刻になってきました。
上の写真のように,最初はミカンの果実がもぎ取られ,枝がその分岐部から裂けるように折られていました。
以前,イノシシがミカンの主幹を,真っ二つに力ずくでへし折って,
温州ミカンの実をほとんどむさぼっていたことがありましたが,
今回の被害箇所は地面から1.1mよりも上でしたので,
イノシシの以前の被害例(地面から1m以下)から考えて,あまりにも高すぎます。
イノシシによる温州ミカンの実の食害例の詳細は ⇒ こちらのページ参照
最初はミカンの果実が目的のようでしたので,
園地では,ニホンザルを2017年に初めて視認していたので,猿の可能性も考えましたが,
木に登れる猿がこのようなひどい枝の損傷をするとは思えません。
ミカンの葉の食害
その後,下の写真のように,日が経つにつれて,ミカンの葉が食べられて枝だけになっている箇所が
しだいに増えてきました。
この時はじめて,鹿だということに気が付きました。
確かに鹿がいます。
大粒の黒豆のような色・形の鹿のフンもその後,園内で確認できました。
みかんの枝が折れているのは,葉を食べるときに,食べやすいように口で引き折ったようです。
カンキツ類の樹皮の食害
下の写真は,園地の外縁で野良生えしている実生(みしょう)のカンキツ類の幼木ですが,
樹皮がきれいに剥がされて白い幹が露出し,葉も丸裸になるくらいにきれいに食べられていました。
シカによる樹皮の剥皮の被害ですね。
鹿によるミカンの葉の食害は,温州ミカンだけでなく,不知火,清見,伊予柑,甘夏などにも及んでいます。
山での様々な動物の個体の分布密度が高くなってきているのか,何かの前兆なのか,
列車に轢かれたイノシシやシカ,タヌキ,イタチなど立て続けに見かけるようになりました。
このような獣害ばかりでなく,虫害も,近年かなり増えてきているように思えます。
夏場は,猛暑で害虫は増えるし,冬は,極寒だったり暖かかったりで,
寒さで木が枯れ,春に花を咲かせて夏に実をつけるビワが,秋に花を咲かせて実がついたり,
カンキツ類が早熟,そして早期落果するなど,植物の生理も乱れてきています。
これからの農業は,想定外の大変なことが起きそうです。
獣害対策には,園地全体を取り囲む防獣フェンス(鹿対策には高さ1.5mは必要)の設置が望まれます。
防獣フェンスの設置について詳細は⇒ こちらのページ
2019/01/20
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