植え付けたばかりのカンキツ類の若葉を虫食むアゲハチョウの幼虫の防除
カンキツ園では,毎年夏から秋にかけて,花が咲くわけでもないのですが,
ミカンの木のまわりをアゲハが重たそうな翅をひらひらとさせて
楽しそうに飛びまわっている姿がよく見られます。
それは産卵のためですが,大きな3mを超える成木であれば放っておいても支障はないのですが
植え付けたばかりの苗木の場合,放っておくと葉がどんどん食べられて,枝だけになってしまいます。
今回,その対策について紹介したいと思います。

カンキツの木に集まるアゲハチョウの種類
アゲハチョウといっても色々な種類の蝶がいます。
中でも上の写真のようなナミアゲハ(アゲハ)が代表的ですが,
西日本のミカン畑でよくみられるアゲハチョウは,
クロアゲハやナガサキアゲハといった黒色の翅をもつ種類をよく見かけます。
アゲハチョウは,カンキツ類の葉をとくに好み,ほかの植物は見向きもしていないようにみえます。

アゲハチョウの幼虫によってどのような葉が食害される?
その姿をみるとかわいいですので,幼虫でも駆除するのがかわいそうと感じる方が多いと思います。
しかし,とくに植えたばかりの若い木の場合,
せっかく伸びて成長した葉をアゲハチョウの幼虫に食い荒らされ,木の成長が妨げられてしまいます。
同じ時期に,ミカンハモグリガの幼虫にも若い葉の多くをやられてしまいますので,
放っておけばアゲハチョウと二重の被害にあってしまいます。
夏の間はよいのですが,
9月に果実の収穫がはじまってから,11月頃までアゲハチョウの幼虫がいますので,
成虫が卵を産み付けてしまうと,たちまち若い葉がやられてしまいます。
若葉がなくなれば,他の木に移るか,古い葉まで食べはじめます。
ですので,黒い大きい翅のチョウが飛んでいた場合は要注意です。

アゲハチョウの防除
幼虫が大きくなって,終齢幼虫になり黄緑色の体色になると農薬が効きにくくなる上,
処分してしまうのもしのびない状況に陥ってしまいます。

実際,上の写真のように大きくなってしまった個体は,見逃してあげています。
そうならないように,卵が孵化する前か,鳥のフン状の小さい若齢幼虫のうちに防除しておくのが良いです。
しかし,秋になると温州ミカンなどの収穫時期に入りますので,うかつに化学合成農薬を散布できません。
一番良いのは,手で捕まえてから食べられても支障のない他のミカン科の木(サンショウやカラタチなど)に
移してあげることです(そのために近くに植えておきましょう)。
農薬をどうしても使用しなければならない方は,
温州ミカンなどのカンキツ類では,有機農産物に利用できる農薬として,
デルフィン顆粒水和剤,ファイブスター顆粒水和剤,チューンアップ顆粒水和剤,
といったBT剤(微生物農薬)が,アゲハチョウに対して適用があります。
農薬は微粒子ですので,展着剤を加えて若い葉を重点的に散布すれば効果が持続します。
BT剤がどのようなものかに関しては, こちらのページで紹介しています。
しかし,一番良いのは,木全体を防虫ネットで覆ってしまうことです。
木全体を覆えば,近年被害が多発しているゴマダラカミキリによる枯死の心配もなくなります。
径5㎝以下の若い木でも,食入孔も見つからずゴマダラカミキリにいつの間にか入られ,
成虫の脱出孔が現れた年にもう木が早々に枯れてしまったということもありました。
注意すべきことは,防虫ネットをべた掛けすると,ネットの上からアゲハに産卵されてしまいます。
是非,色々とよく考えて工夫されてみて下さい。
2018/11/07
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